真実の詩




   7





 結局、八戒たちが宿に戻ることが出来たのは、もう夕刻に差し掛かった頃合だった。
 宿に着いた途端、とにかく部屋で休むよう悟浄に言われた。だが、そう言った当本人の悟浄はどこかへ出掛けたままなので、八戒は一人でぼんやりと寝台で横になっていた。
 しかし、かえって気持ちが高ぶっているせいか、まったく眠気がおとずれるどころか休むことすらままならない。
 そのうち横になっていること自体が苦痛になった八戒は、寝台から起き上がるとゆっくりと窓際へと歩み寄った。そして、窓ガラス越しに、日も落ちて暗闇に包まれた外を眺める。
 まるで、あの空間のような闇。
 けれど、同じ闇でも、この暗闇のほうが安心するのは、きっと一人ではないから。
 ここには、確かなものがあるから。
「ナンだよ、寝てろっつっただろ?」
 ドアノブが回された音とともに部屋の扉が開かれる。呆れ混じりに嘆息しつつ、悟浄が窓際に立つ八戒の処まで歩いてきた。
「お帰りなさい。……寝付かれなくて、つい」
「あー、もう仕方ねぇヤツ。……そういや、もう一泊することになったから。この町に」
 悟浄は八戒の横に並ぶと、窓側を背に立った。ちらりと横目で八戒を見ながら、にっと笑う。
「え? 明日の朝、出発じゃなかったです?」
「三蔵サマより伝言。結局、肝心のジープも休めてねぇし、よく考えれば全然買出しも出来てねぇから仕方なくもう一泊。だから、八戒もちゃんと休まねぇとコロス、以上。だとよ」
「……すみませんでした。結局、僕のせいで足止めさせちゃいましたね」
 思わず自嘲ぎみに呟いた八戒をたしなめるように、悟浄は軽くため息をつきながら窓に凭れ掛かる。
「ベツに。八戒のせいでもナンでもねぇだろ」
「でも、僕につけ入る隙があったから、――囚われたのかもしれません」
 確か、あの女はこう言った。
 ――『死に近しい者』が魅入られるのだと。
 だとすれば、もしかしたら自分はまだどこかで――自覚がない部分で、そう思う気持ちも抱えているのかもしれない。
 過去は振り切ったつもりでいた。悟浄とともに生きたいと、はっきり言葉にしたこともある。それでも。
 あんな風に、過去の幻影を見せつけられて、それでも自分は簡単には振り払えなかった。ほんの一瞬だけ、このまま過去の残像に身をゆだねてしまえば楽になれるという思いが、確かに脳裏をよぎった。
 その弱い心が、もしかしたら隙となったのかもしれないと思う。
 それでも、あの時、絶対に死ねないと思ったのも真実(ほんとう)。
 生きて、悟浄に会いたいという強い思いがあったからこそ、今自分は“ここ”にいる。
 八戒は口許にうすく笑みを刻んだ。そして、翠瞳を細めて悟浄を見つめる。
「――なあ、八戒」
 ふと、悟浄が前を見据えたまま口を開いた。
「なんです?」
「お前、まだ死にてぇとか、思ってる?」
 その問い掛けに、八戒は短く瞠目した。じっと悟浄の横顔を見つめて、――ふ、と、視線を窓へ向ける。
 そこには、ぼんやりと自嘲の笑みを浮かべる自分の顔と、悟浄の真紅の髪が映し出されていた。その色を窓越しにはっきりと捉えて、八戒はそっと目を伏せた。
「――苦しいです」
 八戒の口からぽつりと漏れた言葉に、悟浄はそろりと顔を八戒へ向けてきた。悟浄の訝しげな視線を感じたまま、八戒は言葉を続ける。
「生きることは苦しいです。今でも」
「……八戒」
「貴方を想うことも苦しいです。でも、それだけじゃないから――だからこそ、死にたいとは思いませんよ。今は」
 そう。
 八戒にとって、悟浄こそが確かなもの。
 八戒をここに繋ぎ止める――生きる証。
 言葉なくただ八戒を見つめる悟浄に向かい、八戒はふうわりと柔らかく微笑んだ。静かに二人の視線が絡み合う。
「だから、今は、確かなものを下さい――悟浄」
 そう言って、八戒は悟浄に手をのばした。刹那、その手をきつく掴んだ悟浄に深く深く抱きしめられる。八戒がその背に腕を回したのと同時に、悟浄の唇が八戒のそれに深く重ね合わされた。
 吐息すら奪い尽くすほどの激しい口づけに、八戒もまた同じだけの強さで返す。
 もっと深く。もっときつく。
 互いに、確かなものを与え合い、求め合う。

 ――全身で、感じるために。





 唇をあわせる角度を変えて、何度も何度も深くきつく求め合う。
 手をのばしたのは、八戒のほうから。
 けれど、その手を強い力でもって引き寄せたのは、悟浄のほう。
 互いの想いの強さに比例するかのように、二人の躯の距離も一気に縮まる。
 息苦しさから、ふ、と八戒の唇がうすく開いた途端、遠慮のない悟浄の舌がするりと入り込んできた。
 その熱いものがねっとりと口腔内を舐め上げる感覚に、八戒は思わずびくりと躯をふるわせた。だが、相手を欲しいと思う気持ちはどんどんふくらむ一方で。
 もっともっと。
 悟浄自身を感じたいから――少しでも、早く。
 八戒も悟浄の動きにあわせて、思うまま八戒の唇を貪り続ける悟浄の舌に己のそれを絡めた。
「……んん、はっ……」
 そろりと、悟浄の手が八戒の着衣にかけられる。こんなふうに、急くように事を進める悟浄もめずらしい。
 そんな些細なことにすら煽られている自分自身に内心苦笑しつつ、八戒はそれでも悟浄の首へ自らの腕をきつくまわしたまま、吐息すら奪いつくさんばかりの口づけを交わし続ける。
 キスに夢中になっていた八戒の意識を向けさせるためにか、不意に悟浄の悪戯な手が、まだ柔らかさを残す胸の双果をきつく抓みあげた。瞬時に背筋を走った甘い快感に、思わず八戒はキスをほどいてしまう。
「……っあ! 悟、浄……っ」
「気持ちイイんだ……?」
 ぺろりと、悟浄の舌が紅い尖りを舐め、舌先で捏ねるように吸い上げられる。
 零れる吐息を噛み殺しながら、八戒がちらりと視線を下に向けると、上着を胸元までたくし上げられている状態で、紅く勃ち上がった胸飾りを悟浄にいいように弄られている様が目に入り、八戒は思わず羞恥に目元を赤く染めた。中途半端に乱された状態というのが、かえって恥ずかしかった。
 たったこれだけのことにそれでも悦を感じて、次第に腰に熱がたまっていくのが判る。
 八戒は、少し潤みかけた翠玉の瞳で悟浄を睨むと、悟浄の服に自ら手をかけた。
「八戒?」
「服、脱いで下さい……で、僕のも脱がせてくれませんか……?」
「こーゆー中途半端なのもソソるんだけどな」
「……今日は直にちゃんと貴方を感じたいんですよ。だから、……それはイヤ、です」
 ふわりと微笑みながら、八戒はきちんと悟浄の眼を見て、はっきりと望みを口にした。一瞬、悟浄の目が小さく見開かれる。だが、すぐにニヤリと淫蕩に口の端を上げて見せた。
「リョーカイ。しっかり直に感じ合おう、な」
 そう言いながらあっという間に自分の服をすべて脱ぎ捨て、その勢いのまま悟浄は八戒の衣装もあっという間に剥ぎ取ってしまった。
 ようやく熱くなった肌と肌が触れ合ったことで八戒がほぅ……と安堵の息を漏らした途端、悟浄は急に神妙な表情を浮かべたかと思うと、ぎゅっときつく八戒の躯を抱きしめて、そのままベッドへと押し倒した。
 いきなり二人分の重みを乗せた寝台が、ぎしりと大きな音をたてて軋む。背中からまともにベッドに倒れ込むかたちになった八戒は思わず息をつめていたのだが、悟浄はただ八戒を黙って抱きしめたままで。
 八戒はそろりと悟浄の耳元に囁きかけるように、その唇を寄せた。
「……悟浄?」
「……お前、ちゃんとここにいるんだなって実感してた」
 まるでしぼり出すような声音で呟いた悟浄の一言に、八戒もびくりと肩をふるわせた。
 その声が、あまりに痛々しくて。――八戒の胸にまともに堪えるような、その呟きがひどく堪えた。
 どう言葉を返していいのかすぐには思いつかなくて、八戒もその背にまわしていた腕で、さらにきつく悟浄を抱きしめた。
 一糸纏わぬ状態で抱きあっていながら、まるで欲情など一遍も感じさせない抱擁に、八戒はゆるゆると詰めていた息を吐き出した。
 あわせた肌から、悟浄の想いが流れ込んでくるのが、判る。
「ええ、僕はここにいます。こうして、ちゃんと貴方の元に……」
 不安だったのは、きっと悟浄も八戒も同じだったということ。自分のことで精一杯だったけれど、八戒もようやくそのことに気がついたから。
 その想いに応えるように、八戒もちゃんと言葉を返す。
 八戒の言葉に、悟浄はようやく顔を上げて八戒をじっと覗き込んだ。ふわりと軽くその額に口づけを落とす。
「一日しか離れてなかったんだけどな、なんだかえれぇお前と離れてたみたいな気がする……。本当に、信じてたけど、でも、」
「それは僕もいっしょですよ、……だから」
 八戒は悟浄を正面から見据えると、にこりと、思わず悟浄が目を瞠るほどの艶やかな笑みを浮かべた。
「確かなものを、下さい。そして、貴方も僕を感じて下さい」
 再度同じことを口にした八戒を、悟浄はじっと見つめ返した。そして、その言葉の意味を正しく理解した途端、今度は八戒の唇に軽く接吻る。
「……俺をここまで煽ってどーすんのよお前? もぉ止まんないからな……覚悟、出来てる?」
 苦笑しつつも、そろそろと八戒の腰の辺りへ掌を這わせ始めた悟浄の肩へ縋りつくように、八戒は再び悟浄を抱きしめた。悟浄の肩口に額を押し当て、彼から表情を隠すようにひっそりと微笑む。
「覚悟なんて……いまさら、ですよ」
「上等」
 それが、二人だけの大切な時間の――始まり。





 それまで悟浄の手によって散々弄られていた八戒自身を口腔内に捉えられ、その感じやすい部分への直接的な愛撫に八戒の躯がびくびくと跳ねた。
「……あ、……はぁっ……ん、……ッ」
 既に硬く張り詰めていたそれへ、悟浄はさらに八戒の情欲を煽るように、ねっとりと舌を這わせる。
 ぴちゃりと、先走りの蜜をわざと音を立てて舐め取るその仕種に感じるまま、甘い痺れが腰奥へと広がる。そこからじんわりと広がる快楽という名の痺れが、八戒の身の内をとろりと溶かしていく。
 まるで焦らすように、それでいて忙しく高みへ突き上げられるような悟浄の淫靡な舌技に、八戒の口からはもう意味をなさない喘ぎ声しか出てこない。
「も、もぅ……ごじょ、お」
 過ぎる悦楽に腰をふるわせて、八戒は下肢に顔をうずめて愛撫を続ける悟浄の頭へと手をのばした。もう限界が近い躯は、だが思うように力が入らずにゆるく真紅の髪を掴むだけ。
 それに気づいた悟浄が、口の端についたどちらのものとも判断がつきかねる体液をわざとらしくぺろりと舐めて、八戒を見上げた。
 途端、悟浄の顔前にそそり立つ、限界まで膨れ上がった己自身が目に入り、そのあまりの痴態に八戒は恥ずかしげにひくりと喉を鳴らした。
「ナニ……も、イきたい?」
 目を細めて、それこそ舐めるような視線を向けてくる悟浄へ、八戒は再度腕をのばした。悟浄は躯を起こして八戒の手を取ると、その痩身を上半身だけ起こしてやる。
「僕だけは、イヤです。……だから、貴方の、も」
 八戒がゆるゆると悟浄の下肢へと手をのばすと、悟浄の欲芯も雄々しく勃ち上がっていた。それをそのままゆるく握りしめたが、悟浄の手によって外されてしまう。
「悟浄……」
 恨めしげに悟浄を見ると、悟浄は口許に苦笑を浮かべながら八戒の腕を取り、ちゅっと、その掌へと音を立ててキスをした。それにすらあわい快感が八戒の背筋を這う。
「それもいいけどな、今日はお前を感じさせてくれるんだろ? だから、こっちで……」
 反対側の手を八戒の双丘の狭間へのばし、悟浄はまだ固く閉ざされたままの窄りをそっと指の腹で撫でた。
「ちょっ……と、悟浄……」
「舐めて」
 八戒の腕を捉えていたほうの手の指で、八戒の唇をまるで愛撫するように這わせながら、悟浄はじっと八戒に誘いをかけるように見据える。もちろんもう一方の手は、あいかわらず二人が繋がる場所を意味ありげに行き来していた。
 八戒はそろりと悟浄の指を口腔内に迎え入れると、ねっとりと舌を使って舐め上げる。それは、まるで悟浄の欲を口で愛撫する時の動きに酷似していて、知らず悟浄の口許にも淫蕩な笑みが浮かぶ。
 その動きにあわせて、ゆっくりと悟浄の指が八戒のなかへと入り込んできた。おそらく潤滑剤で指を濡らしているのだろう。その濡れた感覚にぞくぞくと肌が粟立つ。
 悟浄の遠慮のない指は、どんどん八戒の奥を暴いていく。次第に増やされていく指と、的確に八戒の悦い場所を掠めていく手管に、八戒はただ悟浄に与えられるまま身をふるわせるしかなくて。
 上からも下からも響く淫靡な水音に、神経を灼き切られそうなほどの快楽を感じて、八戒はただ頭(かぶり)をふった。
 とにかく、今はもう――ただ悟浄が欲しくて。
 この身を翻弄する男へと、八戒はまっすぐに腕をのばす。
「……ふぁ、もうごじょ、……早く、いれ、……っ」
 悟浄に縋りつきながら、八戒は必死で懇願した。涙まじりのそれに、悟浄はそれでも八戒を苛む動きを止めず、カフスの嵌った耳朶へ愛撫するかのように息を吹きかけながらささやいた。
「確かなものが欲しいんだろ、八戒……?」
「ぃ……あぁっ、……おねがい、悟浄……」
 八戒は自ら腰を揺らして、悟浄に哀願する。悟浄は八戒のなかからことさらゆっくりと指を引き抜くと、限界まで膨れている欲望の根元をきつく握りしめた。激流を堰き止められたような痛みに、八戒の瞳からますます涙が流れ落ちる。
「……ッ」
「いくらでもやるからさ……自分から来いよ、八戒」
 そう言って、八戒を跨がせて馬乗りにさせると、悟浄はそのまま寝台の上に背中から沈み込んだ。
 ――この体勢は、つまり。
「……僕に自分から挿れろ、と……?」
 見下ろすかたちになった悟浄を、八戒はまじまじと見つめた。
 めったにしないこの体位に、羞恥は感じるものの。けれど、今はそれよりも彼が欲しかった。彼自身を己の身で感じたかった。
 八戒はふわりとあわく――それでいて艶冶な笑みを口許に刷いた。そろりと右手で悟浄の雄芯を握り込み、そのまま自らの腰を落としていく。
「うぁ……、は、……あ……ぁあ」
「……無理、すんなよ、八戒……ッ」
 悟浄の手によって十分にほぐされていたその場所は、彼自身から溢れ出していた蜜の滑りも手伝って、かなりの圧迫感をともないながらも確実に欲の塊を貪欲に呑みこんでいく。
 この刺激で八戒が達してしまわないように、悟浄はびくびくと脈打つその根元を再び堰き止めるように握った。そのせいか、八戒の内壁も、かなりきつく悟浄を締めつけている。
「ク……ッ、キツイって、はっかい」
「無茶、言わないで……ああぁ……ん!」
 ずるりと、己の自重で悟浄のすべてが収まりきったのに、最奥の悦い場所をこすり上げられた衝撃で、八戒は一気に高みへと押し上げられた。脳髄が痺れるほどの強烈な快感が身のうちを一気に駆け抜ける。
 それと同時に、悟浄の腹へ白い快楽の証を吐き出した。
「うっ……ちょ、……っと、八戒、」
 どうやら八戒が極みを迎えた時、相当きつく悟浄を締め上げてしまったらしい。
 八戒が荒い息を吐きながら見下ろすと、悟浄は顔を歪めながら必死に耐えているようだった。申し訳なさそうに眉宇をよせると、八戒は苦笑ぎみに微笑みながら、そっと悟浄の引き締まった腹へと両手を置いた。
「すみません……。でも、いくらでも、くれるんですよね……?」
「俺はまだイってないっつーの。それに…お前だって、感じさせてくれるんだろ? これからたっぷり」
「ええ、……もちろん、です」
 体内に突き刺さる悟浄の張り詰めた滾りを感じて、八戒は嬌笑を浮かべながらゆっくりと己の腰を前後に動かし始めた。途端、繋がった部分から痺れるような悦楽が湧き上がり、八戒はびくんと躯をふるわせた。
 その動きにあわせて、悟浄もまた八戒の腰を掴み、ゆるく律動を刻み始める。
 二人だけで感じる、確かなもの。
 二人だけで感じる極みを目指して、互いの躯も――そして、その奥底にあるココロも重ね合って。
 次第に、悟浄の突き上げが激しいものへと変化してきた。だんだんと自分でいいように動くどころではなくなってきた八戒は、悟浄から与えられる押し上げるような抽挿にただ溺れていく。
 繋がった場所から漏れる激しい卑猥な水音も、二人の官能を煽るだけだ。
「あぁぁっ、も、……ごじょ、…イィ……」
 八戒の口からは、嗚咽まじりの嬌声がひっきりなしに零れるのみ。
 がくがくと痩身をふるわせて、もう躯を支えられなくなった八戒は、自分を穿ち続ける男の胸に倒れ込んだ。
 悟浄は目の前にあるいとしい男の頭を掌で包み込むように掴むと、その唇へ噛みつくように口づけた。すぐに互いの舌を差し出し合い、絡め取る。
 八戒は苦しそうに声を漏らしながら、それでも上から覆い被さる姿勢で悟浄の唇を貪った。もう二人とも限界は近い。
 忙しないキスを繰り返しながら、悟浄も八戒も、極みを目指してこみ上げる絶頂感に身を委ねていく。
 悟浄はよりいっそう激しく八戒を翻弄し腰を打ちつけ、八戒もまた内部を蹂躙する悟浄自身をきつく締め上げる。ベッドが軋む音と、互いの激しい息遣いと、短く漏れる八戒の淫らな嬌声だけが、室内を支配していた。
 そして。
「ふ、ぁあああっ、悟浄……ッ!」
「……はっ、かい……!」
 ほぼ同時に二人は互いの名を呼び合い、ともに意識が眩むほどの絶頂を感じて迸る欲の全てを互いに放った。



 それは、確かに。
 二人が確かなものを感じ合った瞬間、だった。








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